とりあえず、目指すべき目標

ボイストレーニングをやる上でとにかく大切なこととは「呼吸、声帯、共鳴の3点のバランスをとることによって理想の声を出せるようにコントロールすることである」というところに話を戻します。

これをもう少し違う言葉で言うと、ボイストレーニングとは「身体の構造を知り、どこにどのような力を入れると声にどのような変化が起こるのかを知り、体験し、自由に動かせるようになること」となります。

 

たとえば呼吸に関して言えば、「息の吐き方の技術的な幅を増やす(強く/弱く、深く/浅く…)」「そのために必要な筋肉の動きなどを理解する(胸式呼吸/腹式呼吸、腹筋/背筋…)」「技術の幅を広げながら、どのような呼吸がどのような表現に適しているか考える」という感じのプロセスになります。

これを、残りの声帯と共鳴についても同じようにやっていきます。

この辺についてはまた別の記事で詳しく書いていきます。

 

で、これをさらに簡単にして、ボイストレーニングをやりはじめた人がとりあえず目指すべき目標とは、初心者向けに言うならば

  • 遊び感覚で、いろんな声を出してみよう!
  • そのとき、体と声にどんな変化が起きたか感じ取ろう!
  • そういう声の出し方が、どんな時に使えるか考えてみよう!

みたいな感じになります。

「遊び感覚で」ってのは、けっこう重要。初心者にいきなり正解なんて出せないですし、いきなり「この苦しい道の追求こそが唯一無二の正解なのである」みたいなものに触れてしまうのはけっこうリスクがある。

トレーナーとしては、学習者の遊び心や好奇心や探求心を刺激しつつ、うっかりケガしたり明らかにヤバイ道へ走ってしまわないよう見守るスタンスが大切でしょう。

独学者の場合は、「なんでもやってみていいけど、痛みを感じるような練習はやめよう」というラインは大切に。声帯はデリケートなので、軽い痛みでも危険サインとしては強いものだと考えてほしい。

 

もっと上を目指す人の場合は、

  • 地声と裏声の両方を使いこなして
  • 3オクターブくらいの音域を
  • 滑らかに自由に行き来できるようにしよう

あたりが、ボイストレーニングの当面の目標としては妥当なラインかと思います。

(「地声」「裏声」っていう言葉はけっこう真剣に定義を考えてみると大変な言葉なのでまた別に記事をいくつも書いていくことになると思いますが、今は気に留めつつ流してください。)

とりあえず地声と裏声の両方を鍛えると、出せる声の幅が大きく広がりますし、呼吸・声帯・共鳴のバランス感覚もよくなっていきます。

とりあえず3オクターブくらい(声の高い女性はもっと狭め、声の低い男性はもっと広め)を出せるようになれば、一般的な人間としては「地声の一番低いところから、裏声の一番高いところまで使えている」と考えてよいでしょう。

その上で、できる限り滑らかに高音から低音、地声と裏声を行ったり来たりできるようになれば、呼吸・声帯・共鳴のバランス感覚が優れている、その人にとって生得的なベストに近いバランスが取れている、と言ってよいでしょう。

なので、本格的に歌のトレーニングをしたいという人は、まずこういう目標を持つことになるかと思われます。いわゆる「ミックスボイス」の練習です。

(「ミックスボイス」についても言葉の定義がむちゃくちゃになりがちなので別に記事を書いていくことになるかと思います。)

 

それにプラスして、やりたいジャンルとかに独特な発声法、テイストを学んでいくことになるかと思います。

合唱ならこういう感じの声じゃないとコンクールの評価が辛い、とか、最近の流行のポップスならこういうパフォーマンスができないと売れない、とか。

この辺はしっかり先人の指導を聞きつつ、「でもそれだけじゃねえんだよなあ」というのも忘れず、がんばっていきましょう。

 

 

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