「原因」から考える、声区の話(その2、地声と裏声について)。

前回の記事で書いたように、声を出すときの声帯の状態には、

  1. 声帯全体を普通に開閉させる
  2. 声帯を「短く、一部分だけ」使って高音を出す
  3. 声帯を「表皮だけを振動させて」高音を出す

という3パターンがあります。

で、このパターンの違いが原因となって声の高さや声質が大きく変わってくるので、それを区分けして「声区」と呼んだり呼ばなかったりします。

(何度も書きますが、万人に統一された定義や基準があるわけではない。)

 

そこで、これらの3種類の声をどう呼び分けているのかについてですが…。

 

 

まず、日本語として馴染みの深い「地声」「裏声」という区分で考えると、

  1. 声帯全体を普通に開閉させる→「地声」
  2. 声帯を「短く、一部分だけ」使って高音を出す→「(芯のある)裏声」
  3. 声帯を「表皮だけを振動させて」高音を出す→「(芯のない)裏声」

という分け方で呼ぶことが普通でしょう。

2と3ではけっこう声質が大きく違うので、「芯がある/ない」とか、「息漏れのない/ある」とか、その他様々な形容詞をつけて区別をつけることもあるし、「どっちも裏声は裏声でしょ」という感じでいちいち分けない人もいますね。

あと「地声」については、「地」という言葉がマイナスイメージを帯びているため、「声区のひとつとしての地声」ではなく「声楽的にコントロールされていない悪声=地声」として使う人がちょくちょくいますので、そこには注意が必要。この問題については、そのうち詳しく書きたい。

 

 

そして混乱しやすいのが、「チェストボイス(胸声)」とか「ヘッドボイス(頭声)」とか「ファルセット(仮声)」とか、西洋由来の概念による声区分類についてです。

 

基本的には、

  1. 声帯全体を普通に開閉させる→「チェストボイス」
  2. 声帯を「短く、一部分だけ」使って高音を出す→「ヘッドボイス」
  3. 声帯を「表皮だけを振動させて」高音を出す→「ファルセット」

という感じで考えている人が、最近は多いのかなと思います。

 

しかし「ファルセット」や「ヘッドボイス」という言葉を「裏声のなんかかっこいい言い方」だと思ってる人は、2も3も一緒くたに「ファルセット」「ヘッドボイス」と言ってしまって、明確な使い分けをしない場合が多々あります。

(そういうふわっとした分け方が間違っているということではないです。というか、一部のボイトレマニア以外にとってはだいたいそういう曖昧な区分の方が一般的です。)

 

また、あんまり見たことはないですが、学んできた宗派によっては「ヘッドボイス」と「ファルセット」の定義が上の例と逆だったり、それぞれに別の名前がついていたりする場合もあります。

なので、声区の話をしていて「なんか話が通じないな」と感じたときは、とりあえずその人がその言葉で「何をイメージしているのか」を考えることが大切です。

 

 

そしてさらに難しいのが、「ミドルボイス」とか「ミックスボイス」とかいう言葉が出てきた場合。

「ミックス(混ぜる)」「ミドル(中間)」という、よく似ているけれどちょっと違う言葉なので、やっぱり同じ意味の言葉として使っている人もいるし、定義分けしている人もいますが、それはいったん置いておいて。

これらの言葉は、使う人によってかなり意味や定義が違ってくるので要注意ワードです。

 

この辺を説明すると長くなるので、いったん記事を区切ります。 

 

 

 

 

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