あまり使いたくない「曖昧な言葉」について
ボイストレーニングをやっていると、お決まりの言葉なんだけど、具体的に考えると何を言ってるんだかよくわからない、あいまいな言葉で指導したりされたりすることってよくあるんじゃないかと思います。
例えば、「喉声になってるから直せ」とか、「喉が開いていない」とか、「喉じゃなく、もっと高いところから声を出すように」とか、「腹から声がよく出ている」とか、「鼻から上だけを響かせろ」だとか…数えきれないほどたくさん。
こういった曖昧な言葉は、教える人と教わる人の間でフィーリングが合っていれば有効な指導法になることもあるのですが、そうでなければ具体的な問題点の把握や改善につながらなかったり、教える人の教えたいことと全く違った受け取り方をされたり、教わる人に何も伝わってないのに「なんかやった感」が醸成されて「できてないのに練習したつもり」になってしまったりする危険性もあります。
こういった曖昧な言葉が使われがちになってしまう理由は、
- 知識不足によって、適切な範囲を指す言葉を使えていない
- 言葉が濫用されるうちに、意味や範囲が変わってしまった
- 言葉自体が「善悪」のイメージを帯びてしまっている
という3つかな、と私は考えています。
例えば「喉声」って言葉がありまして、ボイストレーニングの現場でもよく使われているのですが、この言葉について考えてみると、
- 「喉」って具体的にどこのこと?声帯?喉頭?咽喉?口腔奥部?舌根?それがどうなってると喉声なの?どうやったら直るの?
- 「喉声」って言われる症状って、本当に「喉の力み」などが原因のものもあれば、そうでないものも多くて、めちゃくちゃ広い範囲の話になっちゃってませんか?
- そもそも声は基本的に声帯で作られるものなので、「喉声」=悪、直すべきもの、って定義がおかしくないですか?喉からしか声は出せませんよ?
って感じで、なんというか「ボイトレ業界における代表的な曖昧な言葉」なんです。
私は基本的に使わないですし、指導者がこの言葉を使った場合「具体的にはどういうことなんですか!?」というツッコミを必ず入れます。そうしないと、具体的に何がどうなってて、何をどうしたらいいかわからないからです。
こんな感じで、ついつい使ってしまいがちな「曖昧な言葉」について考えていくと、具体的で実用的なボイストレーニングってどういうものかな、という点について考えを深めていくことができるかもしれません。