意外と伝わってない「肩幅に足を開く」ってどのくらいなのか問題

「肩幅に足を開きなさい」というのは、発声するために立ったときの「良い姿勢」を表すときに、とてもよく使われる言葉です。

しかし、実際にボイストレーニングの現場で「肩幅に足を開いてください!」とだけ言ってみると、よっぽど同質性の高い集団でない限り、だいたいすごくバラバラな足の開き具合になります。みんな「肩幅に足を開いているつもり」なのに。

 

なぜそういうことが起きがちかというと、「肩幅に足を開く」ってのは、

  1. 肩のどこをもって「肩幅」と言うのか
  2. その「肩幅」に、足のどこを合わせるのか

の2点をどう受け取るかによって、10~20cmくらいは余裕で変わってくるからですね。

 

私の経験則だと、スポーツ経験者(特に身体を左右に激しく切り返したり、身体的にぶつかりあったりすることが多い球技や格闘技など)は重心を低く取りたがるので、「肩幅に!」って言われるとクラシックなステージでは「開きすぎかなー」ってくらいに開いてしまいがちになる傾向があります。

「歌もフィジカル重視だぜ!」くらい元気な人だと、肩の外側に足の重心(踵や母指球)が来るくらいまで開いたりしがちな人もいる。

逆に、スポーツ経験が少なく身体的にあんまり活発ではない人に「肩幅に!」って言うと、しぶしぶ肩の内側(脇)のラインに足の外側(小指)が触れるか触れないかくらい開くだけの、ほとんど足を開かない「棒立ち」状態になってしまう人も多い。

そういう人が混在している中で「肩幅!」とだけ言ってもそりゃあバラバラになって当然です。

 

それでも「肩幅に足を開きなさい」という指導が多いのは、肩幅という言葉が実は曖昧なのでどうとでも取れるが故に、

  • 発声時にイイ感じの足の幅とは、「肩幅」である
  • 「肩幅」とは、イイ感じの足の幅のことである

みたいなダメトートロジーに陥っちゃってるからなんだろうなあと思います。

 

 

ボイストレーニングにおける足幅について、私は以下のように考えています。

 

「肩幅に開く」という言葉にこだわってはいけないし、そんなお決まりの言葉は忘れて、「最も声の出しやすい足の幅」を個人に合わせて探すべき

そうすると、だいたいの人は「これって肩幅だよね」と感じるくらいの足の幅に落ち着くことが結果的には多いよ。

 

合唱なんかで、見栄え的な問題から「足の開き具合をそろえたい」と思うなら、ただ「肩幅」と言っても通じないというか解釈の幅がすごく大きいよ。

なので、足のどこを肩のどこに合わせるのか、具体的に指定すべきだよ。

 

という感じになります。具体的に考えましょう。

 

足の開き幅に限らず、「もうちょっと具体的に指示してくれれば、もっと簡単に合わせられるのになー…」と感じる指示ってボイストレーニングやってるとたくさんあります。

 足の開き具合をどうすると声にどんな変化が起こるのか、についてはこちらの方でいつか書きたいと考えています。

 

 

 

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