バランスをとること

発声は「呼吸、声帯、共鳴」によって生じ、これらを操作することで声を操作することができますが、操作する上でとても大切なのは「発声はバランスによって成り立っている」という考え方です。

 

呼吸に関して言えば、呼気を強くしたり弱くしたりすることなどによって声をコントロールすることができますが、強くしすぎても弱くしすぎても発声に問題が起こってくるので、ほどよいところでバランスをとることが必要です。

声帯についても、声帯の閉じ方を強くしたり弱くしたり、声帯の位置(喉頭の高さ)を上げたり下げたりすることなどなどによって声をコントロールすることができますが、これも極端に行うとどちらに行っても発声に問題が起こってくるので、ほどよいところでバランスをとることが重要です。

共鳴も、共鳴腔(口や喉の中の空間)を広げたり狭めたり、響かせる位置を前にしたり後ろにしたりすることで声をコントロールすることができますが、どの方向性であっても極端に行うと発声に問題が起こってくるので、ほどよいところでバランスをとることが大切です。

 

バランスが重要であるということはとても当たり前なことなのですが、極端な思想に基づくトレーニングとか、自己流理論によるトレーニングとか、閉じた人間関係での発声論議ばかりしていると、このことを忘れてしまいがちです。

バランス感覚を忘れて、「○○は、すればするほどよいのだ!○○を突き詰めていないこれは間違った発声法なのだ!」みたいになっちゃう人は、けっこうよく見かけますし、自分ではなかなか気づくことができません。

(初心者向けとか集団向けのボイストレーニングで、個別に指導するべきレベルに至らず一般論しか言えないから「だいたいみんなこういう傾向がある!だからこうするのが正解!」みたいにしか指導しようがない場合もなくはないですが。)

 

よくわからないうちから独力でボイストレーニングについて調べたりすると、一見矛盾したような記述がたくさん見つかるかと思いますが、それは発声はバランスが重要だからという面によるかもしれません。

例を挙げると、ある人は「呼気を強く大量にするためにはどうすればいいか」ばかり書いているのに別の人は「強い呼気なんて必要ない!息は細く細く少しずつ使うものだ!」と書いていたり、あるときは「声帯は力を抜いて、軽く合わせましょうね」と言ってた人が別のときには「こういう風に声帯に力を入れてしっかり閉じてイイ声を出しましょう」と言ってたり。

こういうことがありがちなのは、発声はバランスによってなりたっているので、あらゆる要素において「強める方向のトレーニング」と「弱める方向のトレーニング」が存在するからです。そうでないと、バランスがとれませんね。

自分にどちらの方向のトレーニングが必要なのかを判断するのは簡単なようでいて非常に難しいことなので、ボイストレーナーを選ぶ際にはその判断がなるべく適切そうな人を選ぶと失敗が少なくなるでしょう。教科書を選ぶ場合にも、できるかぎり両方向のトレーニング方法について考慮されていて、かつ「どういう感じだとバランスがとれていると言えるのか」という点について記述があるものがベストです。

 

 

 

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